カテゴリー:NPO法人わぴねす
ハンセン病にかかった人が差別を受け、住んでいた村から追い出され、集まってできたコミュニティ、ハンセン病コロニー。
ハンセン病の治療薬が見つかって治るとされている今でもインド全土に存在しており、多くのコロニーが差別を受けていたり貧困であったりと問題を抱えています。
私たちはインドの西ベンガル州を拠点に、2011年の団体設立時からコロニーに何度も訪れコロニーの人々を支援してきました。
現在のコロナ禍で彼らは貧困を極め、食べ物も十分に食べられないほどになってしまいました。
そんな彼らの状況を憂いて開始されたのがクラウドファンディングによる食糧支援。
今回はこの食糧支援を中心に立って引っ張ってきた団体代表理事の酒井から、彼女の活動の原点と食糧支援を始めたきっかけ、今後の展望に関してお伝えします。
代表理事の酒井美和は2015年3月に入団以来、活動を続けています。
高校卒業後すぐに初渡印し、もっとコロニーのことを知りたい、そして多くの人にハンセン病問題について知って欲しいという想いから、2015年4月に筑波大学に入学し団体のつくば支部を立ち上げました。毎年10名ほどの学生が新たに入団してくれるほど、大きい団体に成長しました。
活動を続ける中で、もっとコロニーのことを理解するには現地の言語を含む文化を理解する必要があると痛感し、2017年に東京外国語大学のベンガル語専攻に3年次編入しました。
現在は、代表理事をつとめながら主に食糧支援プロジェクトを担当しています。
高校2年生の時にニュージーランドの姉妹校に交換留学し、60カ国以上のバックグラウンドを持つ人たちに囲まれて生活していました。その中で、貧困や紛争を経験した生徒と交流し、みんな同じ人間なのに、生まれた場所が違うだけでこれほど差があっていいのかと疑問に思っていました。
そんな中、高校の先輩である当団体の創設者の話を聞く機会があり、結局みんな同じ人間なのにどうして差別が起こるのか、その差別をなくすにはどうしたらいいのか真剣に取り組む姿に魅了されて面白そうだなと思い参加を決めました。
差別や貧困に苦しむ人と聞いていたので、実際にコロニーに住む人に会ってみて、インフラの不十分さや身なりから
経済的に困窮している様子は理解できたものの、なぜ彼らが差別を受けなければならないのか全く理解できませんでした。活動中はコロニー内に住み込むので、彼らの生活を間近で見ていたのですが、家族や近隣住民にはもちろん、私たちにまでも愛を持って接してくれる方が多くいました。人として、素直に尊敬できる方もコロニー内にたくさんいます。
私たちと何も変わらない。それなのに、ハンセン病にかかったからとか、ハンセン病コロニー在住というだけで
差別・偏見に苦しまなければならないのは到底理解できませんでした。
ごく普通の人が不当な扱いを受けるのが差別なのだと思います。
自分たちだって知らない間に差別をしている可能性がある。ハンセン病への差別だけでなく、これは差別問題全般に言えることだと思います。それを自分自身、理解する必要があるし、多くの人に知ってもらいたいとも思いました。
年配の方の多くがハンセン病回復者で、目で見てわかるような後遺症を抱えていらっしゃいます。
しかし、その子供や孫の世代でハンセン病にかかっている人はほとんどいません。罹患歴があっても、後遺症が残る前に服薬して完治している方が大半です。
問題はハンセン病の治療ではなく、彼らに対する差別が未だあることや、差別からくる貧困が深刻なことだと思っています。
コロニーに住む人々はハンセン病に対する差別のためにまともな仕事に就くことが難しく、今までは日雇い労働や物乞いをしてなんとか生計を立てていました。その日暮らしの生活で、三食を十分に食べられないこともよくあるようでした。
そんな彼らの生活はパンデミックによるロックダウンの影響でさらに厳しいものとなりました。日雇い労働の仕事が見つからない、人の移動がなくなり物乞いで稼げなくなった、お金がなくて熱が出ても病院に行けない、水と米だけしか食べられないなど命に関わる深刻な状況です。
新型コロナウイルスが流行し、インドでは都市封鎖が長期間にわたり実施されました。
第二波後に、コロニーの人々の貯蓄は底をつき、仕事もなく、日々の食事にありつくのも困難な人が急増しました。これまで困難を乗り越え、一歩ずつ貧困から抜け出そうと努力してきたその過去が一瞬にして消えてしまったような瞬間でした。
これから復興に向けて、仕事をするにしろ、勉強するにしろ、まずは十分な栄養をつけることが最優先事項であると判断したため、食糧支援を実施することにしました。
また、多くの人に支援を届けたいと思い国内でクラウドファンディングを実施し、協力を募ることにしました。
クラウドファンディング後に食糧支援を実施した後は、これまで実施してきた就労支援事業を少しずつ拡大させて経済的なサポートを広げていくと同時に、長期学校に通えていない子どもへの教育支援開始に向けて準備を始める予定です。