2019年ノーベル経済学賞を受賞した3人の研究内容とは?~インド出身のアビジット・バナジー氏にノーベル賞!~ わたなべ(インドインターン日記 vol.119)

カテゴリー:インターン生日記

 

みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。

ここ数日はコルカタで過ごしていたのですが、雨が降らないせいかかなり暑く感じました…。

日本はもう涼しくなっていると友人から聞いたので、冬に帰国するときの寒さを考えると恐ろしくなっています…。

 

 

 

 

さて、先日今年のノーベル経済学賞受賞者の発表がありましたね。

世界の貧困軽減に対する実験的アプローチが評価され、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のアビジット・バナジー教授、エステル・デュフロ教授、米ハーバード大学マイケル・クレマー教授の共同受賞となりました。

 

出典はこちら(少し加工して使用しています)

 

 

 

 

そしてなんと、バナジー氏はインド出身の方なんです!

ということで今回のブログでは、彼の紹介と、彼らが一体どんな研究を行っているのかを紹介していきます。

 

 

 

 

アビジット・バナジー氏の経歴

 

バナジー氏は、1961年にインドのコルカタで生まれました。

 

コルカタ大学で経済学の学士号を取得し、その後デリーにあるジャワハルラール・ネルー大学で修士号を取得、1988年にハーバード大学でPh.Dを取得しました。

 

開発経済学を専門にしており、いくつもの国際研究機関で研究員を務めていました。開発経済分析研究所(BREAD Bureau for Research and Economic Analysis of Development)の所長を務めたこともあります!

 

 

 

同じく今年ノーベル経済学賞を受賞したエステル・デュフロ氏は彼の妻です。

 

ちなみに2人の共著である『貧乏人の経済学』(日本語訳されたもの)がみすず書房から刊行されています。私もぜひ読んでみたいです…!

 

世界の貧困を改善するための実験的アプローチに関する功績を認められ、ノーベル経済学賞を受賞することになった3人ですが、その具体的な研究内容はどのようなものなのでしょう?

 

 

 

 

彼らの研究内容

 

経済学などの分野では、自然科学のように完全に条件を揃えた実験を何度もすることは非常に難しいといえます。人間も社会もすべて多種多様であることを考えれば当たり前ですね。

 

いくつかの想定からそれらしいモデルを構築しても、実際には世界はモデル通りに動きはしないのでこれもなかなかに難しい。

 

 

 

そこで彼らは、医薬品開発などで普通に使われる「ランダム化対照実験」という手法に注目し、それを経済学にも応用しました。

 

これをすることで、ある想定から打ち出された社会的政策について、どんなことがうまくいってどんなことがうまくいかないのかを実証実験によって知ることができるようになるということなのです。

 

これだけの説明では、「どういうこと?」と思われる方も多いと思うので、彼らが実際に行った「ランダム化対照実験」の例を見ていきましょう。

 

 

 

 

マラリアの予防接種を子供たちに受けさせるには?

 

インド・ラジャスタン州のウダイプル地区。ここでは、予防接種を済ませた子供はたったの1%でした。

 

ワクチンが足りていないわけでもなく、無料で予防接種を受けることができます。

 

親は子供がマラリアに罹った時には治療のために大金を払っているので、子供に関心がないわけではありません。

 

 

 

この状況では、いったい何が問題で、何が解決方法になるのでしょう?

そこで、彼らはある仮説を立てます。

 

 

 

 

村に診療所はあるけれど、母親たちにとって何kmも歩いて子供を診療所に連れていくことが大変なのかもしれません。

 

例え診療所に赴いたとしても、すでに閉まっていたら予防接種を受けることはできず、ただ引き返すしかありません。

 

行っても意味がないのであれば、その他にやるべきことはたくさんあるので、予防接種はどんどん先延ばしになってしまいます。

 

 

 

 

これが問題なのだとしたら、診療所の問題を緩和したり、先延ばしにせず実施するように働きかけることで、子供たちに予防接種を受けさせることができるようになるかもしれません。

 

そこで彼らは、ウダイプルにある村から3つのグループをランダムに選出し、実証実験を行います。

 

 

 

 

1つ目のグループは、子供が予防接種を受けやすくなるよう、診療所を1か月間開設し続ける村。つまり、問題の緩和を図る施策です。

 

2つ目は、診療所の開設に加え、予防接種を受けるたびに1kgの豆を配る村。つまり、問題緩和と行動を起こさせるための動機付けを同時に実施します。

 

そして3つ目は、比較対象として何も施策を実施しない村です。

 

 

 

 

実験実施前は、どの村でも予防接種の状況は同じようなものでした。

 

しかし実験の結果、診療所の設置だけで接種率は6%から17%まで上昇し、さらに豆を与えた村では38%にまで上がりました。

 

つまり、これがこの問題に対する答えになります。診療所を開設し動機付けとして豆を提供すれば、予防接種率が低い状況を打開することができるという実験結果が得られました。

 

 

 

 

彼らの研究がもたらしたものは?

 

彼らはこれ以外にも様々なランダム化対照実験を行い、それぞれに対しての結果を生み出してきました。

 

これまでも、世界中で貧困削減へのアプローチとして様々な施策が考え出され、実施されてきましたが、そこに「こうすれば問題を解決できる」という明確な根拠は必ずしもないものが大半だったのです。

 

しかし彼らが経済学に応用したランダム化対照実験を用いれば、「どのような条件の施策が、どれだけ成功したのか」ということが数値として得られます。

 

そのような実証データがあれば、根拠に基づく有効な施策を継続的に実施していくことが可能になるのです。

 

彼らのノーベル経済学賞受賞につながった「世界の貧困軽減に対する実験的アプローチ」とは、このようなものです。

 

 

 

 

今回は少し難しい話も多かったですが、いかがだったでしょうか?

私自身が大学で国際開発を学んでいるため、ブログを書いていてとても興味深かったです!

 

 

 

ちなみにTed talksで、エステル・デュフロ氏の ”social experiments to fight poverty” というトークを視聴できます。今回紹介した内容についてもっと詳しく語られており、非常に面白いのでぜひこちらもご覧ください!(日本語字幕もつけられますよ!)

 

 

 

それでは今回はこのへんで!

 

 

 

 

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