ハンセン病コロニー結婚事情について

カテゴリー:NPO法人わぴねす / インドあれこれ / リサーチ事業

こんにちは、かじこです。ご無沙汰しています。

 

今、私たちは西ベンガル州のJhargram県という田舎(ジャングルで有名)に来ています。

 

昔はマオイストが沢山いて危険な場所でしたが、今は政府が雇用や職業などを提供するなどして、暴動や活動は無くなったといわれている場所です。それでも万一に備えて一応警察に届け出は出してきました。

今日から調査を進めていくわけですが、対象コロニーから徒歩2分のホテルの屋上で、日光浴をしながら、且つネットの脆弱性と戦いながらこれを書いています。

 

さて、2010年から少しずつ活動をしてきた私ですが、これまで訪問したコロニーは約30か所になります。

インドには約800か所のコロニーがあるといわれているため、まだまだですが、これまでの訪問や活動から見えてきたことの一つについて今日は話をしたいと思います。

 

ずばり、【ハンセン病コロニーの結婚事情について】です!

 

ハンセン病コロニーの結婚事情

 

説明にはいくつかポイントがありますので、それぞれ分けて話をしていきます。

 

1.大前提としてコロニーの状態はかなりまちまち!

これまでも何度か触れられてきているように、インドのハンセン病コロニーは人口も10人~数万人まで様々、

発展具合も様々です。

 

例をあげると、とても発展し差別もなく一つの町として社会と溶け込んでいる場所もあります。

他には、コロニーが他の地域よりも土地が安いという理由で、ハンセン病と全く関係のない人々がコロニー内に土地を買い家を建てて暮らしているところもあります。そういう場所では回復者に対する差別もなく、皆仲良く、既に社会とコロニーの境目がほとんどわからなくなっています。

 

逆に、差別が原因で訪問者もなく、物乞いをして一日10円20円で暮らしているおばあちゃんが沢山暮らしているコロニーもあります。

 

 

2.コロニーによって差があるのは、リーダーの腕次第(のところが大きい!)!

ポイントが全てを物語っていますが、コロニーリーダーの手腕によって、コロニーの発展具合はかなり左右されるといっても過言ではありません。

 

というのも、コロニーは、差別問題だけでなく、就労、教育、医療、インフラなど様々な課題を抱えています。加えてひと様の土地(場合によっては個人や政府所有などがある)に勝手に集落を作ることで形成されたのがハンセン病コロニーなので、土地問題も抱えていることがほとんどです。

 

それら課題を解決するためには、コロニーの人々だけでは限界があります。リーダーが話をまとめ、様々な人、ものに辛抱強く訴え続けることが必要です。

その結果、政治家やNGO,地方有力者などと繋がり、金銭的・物質的・精神的サポートを得て、少しずつコロニーを発展させることができます。

 

 

 

3.だから人口の多いコロニーは強いリーダーがいて発展している傾向がある!

そのまんまです。コロニー同士の横の繋がりは(少なくとも西ベンガル州)は強いので、コロニーに住んでいれば他のコロニーの情報が入ってきます。お嫁に行ったり、別コロニーの方が環境がよいといった事情から、より発展した、もしくは今後発展しそうなコロニーに引っ越しする場合をたびたび見受けます。

それが何十年も続いていけばある、コロニーの人口は減り、あるコロニーは人口が増える、ということになるのです。

 

なので、人口が多い=(ニアリーイコール)=発展している=(ニアリーイコール)=しっかりしたリーダーがいることが多い。と考えています。

 

実際に、人口の多いコロニーは、力のあるリーダーのもと、労働組合を作ったり、様々なところからサポートを受けて起業したり、お金を貯めて子供を私立の学校に通わせたりといったことがされているのが見受けられます。

コロニーに住む人々が、身の回りをきれいに保ち、社会の人と繋がり、社会のいち構成員として仕事をしたり、学校に通ったりすることができれば、少しずつ社会における差別も改善していくことが多いです。

それが何年も続けば、もう差別におびえ、ハンセン病コロニー出身だということを恥じることもなく、胸をはって生きていくことができるようになるのです。

 

これらの事例はほんの一例ですが、他の劇的に貧しく、情報弱者の状態のコロニーと比べると、圧倒的な違いがあります。(まず雰囲気が全然違います)

 

 

これまでが、大前提のポイントです。

 

…今日のブログは非常に長いですね…まだ結婚について少しも触れられていない…頑張ります。

 

2010年に活動を始めたころ、そして今でも、発展途上のコロニーでは、いわゆる一般社会の人とコロニー出身の人の結婚なんてあり得ない!という状態でした。

 

実際に1,2年前に当団体の学生らが西ベンガル州プルリア県アドラ地方で実施したコロニー周辺に住む人々の意識調査では、まだ多くの人々、特に高齢の人々は、差別意識を持っているし、自分の身内を結婚させるなんてあり得ない!との回答でした。

 

 

しかし、ここ数か月で何か所かのコロニー調査をしていくうちに、発展しているコロニーでは、回復者の子供世代(ハンセン病罹患歴ありなしに関わらず)と人と、外部の人々が恋愛結婚し、コロニーの中で家を建てて暮らしている場合も見受けられるようになりました。

 

実際に、つい最近調査した、KharagpurにあるNimpuraコロニー(今まで見てきた西ベンガル州の中で最も発展しているコロニーの一つ)では、ある外部から嫁いできた女性に少しだけ話をきくことができたのでご紹介します。

 

 

旦那さんが回復者。早めの治療で後遺症は一切なし。一般企業でトラックを運転する仕事をしている。(旦那さんは仕事で家にいませんでした)

奥さんが学生のころ、大学に仕事で出入りしていた旦那さんと出会い、恋に落ちて結婚。

 

Nimupuraコロニーの存在、ハンセン病についても奥さんは以前から知識があり、親御さんへ説明をすることで、すんなり親御さんも結婚に賛同してくれた。

結婚式も盛大に、どの親戚も喜んで参列。

 

今は11歳の子供が一人。コロニー内でなく外部の私立の学校に通わせている。絵を書くことが大好き。

後遺症を抱えているいないに関わらず、コロニーの人々みんなと仲良く暮らしている。

コロニーに住んでいることに全くのhesitationもなく、ここで愛する人々と暮らせて幸せだと彼女は素晴らしい笑顔でいいました。

 

 

また、当団体が長らく活動をしてきた、マニプールコロニー村長Dasさんの娘(回復者の子供にあたる)Moumitaもこの12月にコロニー出身でない一般男性と結婚します。

 

〈2015年にMoumitaの家族友人とデリー・ハリヤナ・ジャイプール旅行にいった時の写真。親戚のお家に泊まらせてもらった、完全に異文化旅行でした。黄色い服がMoumita。〉

 

Moumitaとは個人的にとても仲がよく、どちらが先に結婚するのかを会うたび話していた(笑)ので、結婚の報告を受けた時はとても嬉しかったのを覚えています。

 

また、村長Dasさんが、昔私につぶやいていた、

「Moumitaには、ハンセン病の差別のために、人生における選択肢の制限をもう感じてほしくない。自由に好きなことができるようになってほしい。だから、本当にできるかわからないけれど、どうにかコロニー出身でない誠実な人と結婚させたいと思っている」という言葉を思い出しました。

 

というのも、Moumitaは非常に成績優秀だったにも関わらず、お金がないために理系に進学することを諦め、夢を諦め、地元でも職業(教師)に結びつきやすい英語を専攻しました。大学院時代も土日だけの学校を選び、平日は小学校で学校の先生をしながらずっと家計を支えてきたからです。

 

Moumitaのこれまでの家族への貢献、頑張りを最も身に染みてわかっているDasさんだからこその言葉だと感じました。

 

Moumitaの結婚は、恋愛&お見合い結婚のmixみたいなものらしく、元々お互い知り合いで気になっていた間柄だったところを、親の勧めもあり、結婚することに至ったという流れのようです。

Moumitaには幸せになってもらいたいと心から願うばかりです。

 

 

 

‥‥さて、2例をご紹介しましたが、こんな風に、ハンセン病コロニーをめぐる社会の結婚観は少しずつ変化しつつあります。

 

「近寄るな、来るな寄るな、池や水道を利用するな。熱湯をかけるぞ」という状態から、

「道ですれ違ったり、物を売り買いすることはできても、身内になるなんて言語道断!」という状態へ。

 

そして今では、(インドでは結婚は、カップル2人のものというより、家族・親戚同士が結びつくとのイメージがとても強いことから、)最もハードルが高いと思われていた結婚が段々と許されるようになりました。

 

1人、2人とそういう人々が増えていけば、それがロールモデルとなり、次第に普通のことになっていくのではないでしょうか。

 

これには、医療の発展により早期発見・早期治療ができるようになったこと、社会における、特に若者世代でのハンセン病に対する差別意識が少なくなってきたこと、そしてコロニーの人々が勇気をもって声をあげて、社会復帰を勝ち取ってきたこと(被差別意識の払拭)が理由としてあげられます。

 

ただ、まだまだサポートを必要としている人々がいます。

誰も手助けしてくれる人のいない後遺症を抱えたおばあちゃん。

親が教育の重要性を理解しておらず、本当は進学したいけれど、家計を支えるためにドロップアウトする子供。

そもそも家がなく、地面に布を敷いただけのところに暮らしている家族。

 

 

そんな人々がまだまだ沢山います。

私たちのやるべきことは、彼らをまず発見し(社会で認知されていないことも多いからです)、寄り添い、何ができるか一緒に考えて、前向きになってもらうこと。

そしてロールモデルを作り、コロニー全体が、未来に向かって希望をもち、湧きたてる状態になることだとこの一連の調査事業を通して再認識しました。

 

 

まだまだ沢山やるべきこと、やれることがあります。

 

どうでもいいんですが、最近は、仕事も、プライベートでも、心が雷雨の状態(笑)で非常に辛い状況にありましたが、かなり回復しました。

出張ばかりなので、体調不良になりかけもしましたが、プロポリススプレーとキャンディで乗り切っています。(プロポリスすごい!)

 

 

これからも少しずつ、コロニーの人々と共に、活動に邁進していきたいと思います。

 

最後に、今回の調査の機会をご提供くださった笹川保健財団の皆さま、並びにご協力頂いた方々に感謝申し上げます。

沢山のコロニーリーダーにもお世話になる形で、調査を進められています。

あと少しで全ての調査が終わり、まとめに入ります。

ご報告を楽しみにしていてください!

 

 

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